能力開発プログラム
こんにちは。大山です。
今日は当法人で行っている支援プログラムのひとつをご紹介しようと思います。

当法人の目的は利用者さんの自立を支援すること。そのためそれぞれの利用者さんにどのような可能性があるのか模索し、強みをのばし、社会生活に必要な知識を身に着けてもらうための様々なプログラムに取り組んでいます。
その中で10代の子をメインに男性数人が参加している能力開発プログラムというものがあります。
障害があるために学校生活になじめない10代の子たちは非行行為に走り、結局は基礎学力が低いまま社会生活にもなじめず、生きにくい思いをしている場合があります。
このプログラムでは脳の認知機能を高めるとともに基礎学力も向上させ、将来仕事に就くのに困らないように、地域生活で自立していけるように支援することを目的としています。
まずは先生のご紹介。

浅井夕佳里先生。
NPO法人cocorowaで発達障がい児トレーニングに携わっている能力・知能UPのスペシャリストです。
プログラムは毎週木曜日、10時半から15時くらいまで行われます。
参加している利用者さんは集中することや、じっと椅子に座っていることが苦手な方ばかり。時間通りに一斉にスタートすることができないこともあります。
ですからまずは簡単な体操から。

体操と言っても体を動かすのではなく、目の運動です。
発達障害の方は視野が狭いことが多く、それが作業のミスを引き起こしたり、事故につながる可能性もあります。
写真のように線がいくつも引かれていて、その端に番号があります。番号順に線を目と指で追うことで、広い範囲に視点を動かします。

こんな形や、

こんな形に目を動かしていきます。
それが終わるとCDで物語を聞きます。
楽しそうでしょ?

でも普通のCDではありません。
物語は小学校の国語に使われている内容ですが、朗読されているCDを二倍速で聞くんです。

聞くときは、CDに合わせて物語が書かれている文章を目と指で追います。
耳と目と指とを同時に動かし、早い物語を聞くことで脳の処理速度を上げていくトレーニングです。

その後はプリント学習に入ります。
このプログラムはこのプリントをベースに行われます。学校でやるような日本語や計算のプリントだけでなく、脳の柔軟性をトレーニングするためのさまざまなプリントがあり、ちょっとしたゲームのようです。
この日は「置き換えと計算」のプリントを午前中いっぱい行いました。
「脳の処理速度を上げて、柔軟性を鍛えたい!」
と職員も参加。

ランダムに書かれているイラストそれぞれに数字が割り当てられています。
全部のイラストに割り当てられた数字を書き出して計算し、合計を出すというプリント。スピードを競います。
これ、ものすごく疲れるんです。実際にやってみるとわかるのですが、似たようなイラストがずらっと並んでいるものを判断し、どのイラストが何の数字だったかを覚え、最後には2桁から3桁の足し算をするという、とても集中力がいる作業なのです。
職員は早々に「疲れた・・・」とギブアップ。
今回プログラムは8回目になりますが、初回からずっとやっているゴウくんとリョウタくんは平気な様子です。特にこの置き換えの計算がとても得意なリョウタくんは誰よりも早く計算をしてしまいます。
職員でもなかなか彼には勝てません。
この日は置き換えと計算のプリントだけでしたが、他にもさまざまなゲームのように楽しめるトレーニングプリントをやります。

お昼休憩をはさんだ後は、すこし気持ちがだれやすい時間。
休憩からなかなか勉強への切り替えができない時は、プリント以外もやります。
この日は折り紙をしました。

折り紙も知的レベルを図る一つの手法だそうです。
「折り紙は展開図が頭の中でイメージできないと、作品が折れないものなの。」
と先生はおっしゃっていました。
参加している利用者さんは全員スムーズに折り紙をされました。本を見ていろいろな作品をどんどん作るみなさん。

「みんな上手に折り紙できるね。なるほど・・・」
先生は意味深にできあがった折り紙を見ます。
さまざまな作業から先生はその人にあったトレーニングを選んでくださいます。一見遊んでいるように見える折り紙でも意味があるんです。
折り紙で集中力が戻ってきたところで、プリントにもどりました。
ここからは本格的にそれぞれのレベルにあったプリントをします。

ゴウくんは時計の計算。
普通の数字だと計算できるんですが、時計は60で繰り上がり。それが感覚的に難しいようです。でも時計の計算は慣れるのが一番。職員に教えてもらいながらいろいろな問題をたくさん解きます。

計算が得意なリョウタくんは、彼の希望でこの日から中学校の数学に挑戦します。
まずは正と負の計算。基本的なやり方を職員が説明すると、すぐに理解し問題を解いていきました。

コウキくんは最近参加し始めた利用者さん。
まだ正確なレベルがわからない状態ですが、基本的な計算ができるので次のレベルに進みつつあります。

他国とのハーフであり、育ってきた環境から語彙量を増やすのが今の課題であるカツアキくん。
たくさん並んだひらがなの中から知っている言葉を探すプリントをやりました。
朝からずっと頭を使った作業をするので、2時半をすぎたころからだんだん集中力が途切れてきます。
そうしたらもう一度ゲームにもどります。

先生が高速でカードをめくりながら言った言葉を順番通りに覚えていくゲーム。
言葉は3つから始まり、10個まで覚えます。

同じような方法で、都道府県の県名も覚えるカードもあります。
ここまで来て一日が終了。
「疲れたー!」
と、みなさんおっしゃいます。
でもどんどん集中できる時間がながくなり、どんどんできる問題が増えていきスピードもあがってきているのを、初回から参加させていただいている私は目の前で見ています。
最初はプリント一枚やり終えるたびに席を立っていたリョウタくんやゴウくんが、午前中まったく休憩を取らずにプリント作業を続けられるようになっていたり、
「やりたくない」「めんどうくさい」となかなか参加しなかったカツユキくんが、十何枚ものプリントを一日にこなしたり。
トレーニングってすごいなぁと感じます。
この先もきっとまだまだ変化していくでしょうから、またこのプログラムの変化をご紹介しようと思います。